研究概要 |
家兎骨格筋小胞体(SR)のトリトンXー100処理やトリプシン消化によってSR膜から可溶化されるアルギニン特異性ADPーリボシル転移酵素の性質を検討する目的で,まず1%トリトン処理で得た抽出液をConーAセファロ-ス,ヒドロキシアパタイト,セフアデックスGー150及びモノQカラムクロマトグラフイ-により酵素を精製すると最終精製段階のモノQカラムクロマトグラフイ-により0.15及び0.35M塩濃度に相当する2つの酵素活性ピ-クが得られた.それぞれの精製倍率と回収率は660倍と5%及び140倍と7%であった.0.35M塩濃度で溶出される画分を再度モノQカラムクロマトグラフイ-で分離すると,最初のモノQクロマトグラフイ-の結果と同様に2つのピ-クが得られ,最初のピ-クの方が比活性が高かった.従って再モノQクロマトは本酵素の精製に効果的であり,モノQクロマトで得られた2つのピ-クは界面活性剤と酵素蛋白質との結合の割合の差によって生じるものであって,酵素蛋白質の本質的な相違に起因するものではない.次いで,2番目のピ-クを集め,ゲル濾過とSDS/PAGEにより分子量を求めると,それぞれ48kと40kであった.本酵素を従来より研究代表者らが見いだしたニワトリADPーリボシル転移酵素と比較すると,いずれの酵素もアルギニンを受容体とするが,内在性受容体には全く異なる性質を示す.即ちSR酵素はCaーATPaseを修飾するがニワトリ酵素の基質であるp33は全く修飾しない.また前者はSH剤によって活性阻害を来すが,後者の酵素はこれによって活性が著しく上昇するなど,両酵素はその性質を全く異にすることが分かった.
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