研究概要 |
神経伝達アミンのレベルの調節に関与しているモノアミン酸化酵素に関して次の3点を明らかにした。 (1)A型酵素のcDNAクロ-ニングと塩基配列、アミノ酸配列の決定: 既に得られているB型酵素に対するcDNAをプロ-ブに用いて、ラット肝mRNAのcDNAライブラリ-(λgt_<11>)をスクリ-ニングすることにより約2.5kbpのA型酵素に対するcDNAを得た。その塩基配列から得られたアミノ酸配列によると、526残基、分子量59.6kDであった。ウシやヒトのA型酵素および、ラットのB型酵素との相同性はそれぞれ、約87%および約70%であった。A,B両酵素のcDNAを用いてラット各臓器での両酵素のmRNAの発現量を調べたところ、A型酵素は心臓で、B型酵素は肝臓で特に高い発現がみられた。なお、mRNAの大きさは、A型酵素は4.2kb、B型酵素は2.8kbであった。 (2)B型酵素の哺乳動物内での発現: B型酵素のFAD結合サブユニットαcDNAを哺乳動物細胞に導入したところ、高い酵素活性の発現がみられ、その活性はミトコンドリアに局在していた。このことは、本酵素がFAD結合サブユニットのみから成ることを示唆している。 (3)B型酵素のミトコンドリア局在化シグナルの同定: B型酵素のカルボキシ末端部約30残基に相当するcDNAをチトクロムb_5の親水性部に結合させ、哺乳動物細胞に導入して、発現した融合蛋白質の細胞内局在場所を検討したところ、ミトコンドリアに局在した。これまで、ミトコンドリア蛋白質の局在化シグナルは前駆体のアミノ末端部に存在することが定説となっているが、上記の結果はモノアミン酸化酵素の場合、カルボキシ末端に存在することを示している。
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