研究概要 |
1.キイロショウジョウバエ[Drosophila melanogaster(Dm)]・アルドラ-ゼ遺伝子の構造と発生分化の過程における発現制御の分子機構を解明するため第一段階としてオレゴンR株成虫mRNAよりcDNAライブラリ-を作成し、ヒト筋型アルドラ-ゼcDNAをプロ-ブにアルドラ-ゼcDNAのクロ-ニングをおこなった。 2.相互に異なる3つのクロ-ン(4-3,6-2,3-1)をえた。この中から全長1.6kbのクロ-ン4-3をpUC13にサブクロ-ニングし詳細な構造解析をおこなった。このコクロ-ンには362個のアミノ酸配列に対応するORFの存在が認められた。このORFはMalekらによってさなぎから精製されたアルドラ-ゼとアミノ酸配列1番目から354番目まで完全に一致したがC-末端11アミノ酸(352-362番目)の類縁性は50%であった。奇妙なことにこクロ-ンではORFの126塩基下流にさなぎアルドラ-ゼのC-末端8アミノ酸と75%の類縁性を示す配列が存在した。またORFの355-357番目のアミノ酸に対応する塩基配列と下流8アミノ酸のコドンの5'上流8塩基の間に"逆向き繰り返し配列"が内在する。この両配列が分子内で塩基対を形成すると上流のORFのC-末端8アミノ酸は翻訳されずに下流の8アミノ酸がそれに置き変わることができる。その結果Malekらのさなぎアルドラ-ゼに酷似する酵素の形成が可能となる。この様にDmアルドラ-ゼcDNAの塩基配列の解析からmRNAの二次構造の変換によって部分的に構造の異なる2種類の酵素を翻訳する“alternative translation"機構の存在が予想された。 3.クロ-ン4-3cDNAにレポ-タ-遺伝子をつないだ発現系を構築し大腸菌ならびに培養細胞系で検討を重ねた結果、原核細胞や真核細胞において下流のフレ-ムを使った翻訳が実際に起きることが確認された。今後はゲノム解析を進めると同時に発生分化におけるこの様な翻訳機構の役割ならびに分子機構の解析を行う予定である。
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