研究概要 |
前年度の研究によりマウス線維芽細胞の糖輸送系がxanthine/xanthine oxiclase系(x/xo系)およびH_2O_2により、それぞれに活性化され、抗酸化剤であるビタミンEによりその作用がいずれにも抑制されることを明らかにした。さらにH_2O_2による促進はカタラ-ゼにより阻害されるがSODによっては阻害されず、一方x/xo系による促進はSODやカタラ-ゼの単独処理では阻害されないが、両者の併用により阻害されることを証明した。そこで今年度は糖輸送系のO_2^-やH_2O_2による活性化機構を明らかにする目的で、これらが細胞内pHのアルカリ化を介して作用する可能性を検討するために、細胞膜のNa^+/H^+交換体とNa^+依存性HCO_3^-/Cl^-交換体をそれぞれ阻害するアミロライドと4ーアセトアミドー4'ーイソチオシアノスチルベンー2,2'ージスルホン酸(SITS)を使用し、それらの活性酸素による糖輸送系の活性化に及ぼす影響をしらべた。その結果x/xo系による糖輸送の促進は各50μMのアミロライドとSITSの共存により約50%阻害され、さらにカタラ-ゼを添加することによりほヾ完全に阻害されることを明らかにした。 これらの結果はO_2^-がNa^+/H^+交換体および(又は)HCO_3^-/Cl^-交換体を活性化することにより細胞質のアルカリ化を介して糖輸送を促進することを示唆した。一方、H_2O_2による促進はアミロライドとSITSの存在により影響をうけず、H_2O_2は細胞内pHとは無関係に輸送系を活性化することが推測された。そこでH_2O_2による糖輸送の促進が細胞内Ca^<2+>のキレ-ト化により阻害されるとの報告にもとずき、Hー7(Cーキナ-ゼ阻害剤),Wー7,TFP(Ca^<2+>/カルモジュリン阻害剤)の影響についてしらべた。その結果x/xo系による促進はこれらにより影響をうけなかったが、H_2O_2による促進は予想通りWー7(50μM)やTFP(100μM)などのCa^<2+>/カルモジュリン阻害剤により阻害されることが分かり、O_2^-とH_2O_2による促進機構の間に相異のみられることが明らかとなった。
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