研究概要 |
これ迄の研究によりマウス線維芽細胞の糖輸送系がXauthine/Xauthine oxidase系(X/XO系)およびH_2O_2によりそれぞれ活性化され抗酸化剤であるビタミンEによりその作用が何にも抑制されることを明らかにした。さらにH_2O_2による促進はカタラ-ゼにより阻害されるが、SODでは阻害されず,一方X/XO系による促進はSODやカタラ-ゼの単独投与では阻害されないが,両者の併用により阻害されることを証明した。またO_2^ーによる糖輸送系の活性化は細胞質のアルカリ化を介して起こることが示唆されH_2O_2による促進はWー7やTFPなどのCa^<2+>ーカルモジュリン阻害剤により阻害されることより,O_2^ーとH_2O_2による促進機構の間に相違が認められることを推定した。 最終年度の研究は発癌プロモ-タ-であるホルボ-ルエステルの活性が、そのO_2^ー遊離の誘発作用と密接に関係があり、一方、インスリンは細胞内におけるH_2O_2の生成を促進することがその生理作用に関与するとの報告にもとずき、これらの示す糖輸送促進作用に活性酸素が作用因子として介存する可能性をしらべる目的で、各程抗酸化剤を用いてそれらの影響について検討を加えた。その結果、ブチル-4-ヒドロキシアニソ-ル、クルクミン、ガ-リック酸、ルチンおよびビタミンEはいずれもホルボ-ルエステルやインスリンによる糖輸送の促進を有意に抑制し、さらにSOD+カタラ-ゼすなわちO_2^ーの消去剤で細胞を前処理するとホルボ-ルエステルなどによる糖輸送系の活性化が阻害されることが明らかとなった。したがってホルボ-ルエステルやインスリンの場合もO_2^ー遊離やH_2O_2の生成が糖輸送系の活性化に関与している可能性が強く示唆され、まとめとしてマウス線維芽細胞における糖の輸送反応の活性化機構に活性酸素が重要な役割を果たすことが種々の実験系を用いて明らかにされたと考えられる。
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