研究概要 |
これまでの研究で核分裂中性子やコバルト60などの放射線に被曝したラット胎仔の異常発生過程で急性症状の消退した被曝後5日目頃から熱ショック蛋白やCーfos,Cーmycなどのプロトオンコジンが非被曝の対照に比べて増加していることを二次元電気泳動を用いて確かめてきた。昨年はこれらの蛋白質や前癌遺伝子の局在や消長を調べる研究の一環として免疫組織化学的手法を用いて検討した。即ち妊娠8日目ラット母体にCfー252を60rad,又はCoー60を200rad照射して5日後の妊娠13日目に胎仔を摘出し72KD熱ショック蛋白及びCーmycオンコプロティンのモノクロナ-ル抗体を用い免疫染色を行なった。今年度はin situ hybridizationの方法を用いてCーfos,Cーmycのプロ-ブを用い検討した。結果は昨年度行ったCーmycオンコプロティンのモノクロナ-ル抗体による免疫化学の結果と類似し,これらプロトオンコジンの局在は心筋細胞には見出し難く,心内膜床細胞の一部に認められた。対照群には認められていない。 以上の結果は心臓の正常発生過程では中隔や弁の形成にあづかる心内膜床細胞が異常発生においても重要な役割を演じていることが示唆され,この時期に発育分化の顕著な心内膜床細胞にプロトオンコジンの活性が高まっていることが示された。
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