研究概要 |
平成元年度の研究計画には、(a)被爆試料の採取、(b)試料の整理と保管、(c)試料処理と測定を取り上げていた。(a)の試料の採取については、合計9地点から各種の試料を採取した。それらは、(1)元安橋(爆心付近)の花崗岩、(2)原爆ド-ム(爆心付近)の花崗岩、レンガ、コンクリ-ト、(3)逓信病院(爆心から北東へ約1,000m)のコンクリ-トコア、タイル、(4)貯金局(爆心から南へ約1,600m)の屋上のタイル、鉄材、コンクリ-トコア、(5)白神社(爆心から南西へ約600m)の岩から採取した花崗岩コア、(6)超覚寺(爆心から北東へ約900m)の花崗岩の墓石、(7)旧広島銀行本店(爆心から南東へ約300m)、(8)広島銀行銀山町支店(爆心から東へ約1,800m)、(9)段原の高田氏宅(爆心から東へ約2,100m)の鬼ガワラ、である。これら被爆試料は、広島大学・原医研の試料保管室へ整理保存している(b)。(c)の試料処理と測定に関しては、まず粉砕し粉末とし、それをγ線測定用のGe検出器にて測定する。これらの試料のうち比較的近距離のものについてはそのままで測定可能である。しかし、爆心から1,000mぐらい以上のものについては、そのままでは自然放射線のため、中性子の被爆により生じた^<152>Euのピ-クは検出することができない。そこで、^<152>Euの放射能濃度で上げるための物理的処理を検討した。粉砕試料のうち50〜100メッシュの粒径のものをふるいで取り出す。これを洗浄したあと乾燥させ、磁石で鉄分を取り除く。その後電磁分離器により磁性鉱物と非磁性鉱物とに分離する。非磁性鉱物に^<152>Euは多く含まれているがその中でカリ長石にはバックグラウンドなる^<40>Kを多く含む。そこでこのカリ長石を比重の違いによって分離する重液分離を行った。重液には、比重2.6に調整したギ酸タリウムを使用した。これらの物理的な分離により、ウラン、トリウム系列の放射能や^<40>Kをかなり除くことができた。ただまだ完全ではないので、化学的な処理も必要となろう。
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