低線量放射線の長期被曝による影響を明らかにするために、診療放射線技師99名及び健康人96名(すべて男性)についてサイトメガロウス(CWV)抗体量、ヒトT細胞白血病ウイルスtype1(HTLV-1)及びEpstein-Barrウイルス(EBV)抗体価を測定した。その結果、(1)CMV抗体保有率は、放射線技師群、対照群いずれも約80%であった。CMV抗体異常陽性(ELISA OD値≧0.4)率は、技師群及び対照群とも40歳以上の年令層で約20%であり、40歳未満のそれより約3倍高かった(P<0.1)。しかし、両群の間には有意差はみられなかった。また、技師の被曝線量とCMV抗体との間には関連はみられなかった。(2)HTLV-1抗体保有率は、放射線技師群、対照群いずれも5%未満であり、技師の被曝線量とHTLV-1抗体との間には関連はみられなかった。(3)EBV-viral capsid antigen(VCA)/IgG抗体保有率は、放射線技師群、対照群いずれも98%以上であった。経験年数が15年以上及び被曝線量が300mSv以上の技師群では、VCA/IgG抗体異常陽性(≧1:640)率及びearly antigen(EA)/IgG抗体異常陽性(≧1:10)率はそれぞれ約17%、約35%であり、同年代の対照群(40歳以上)より有意に高かった。(VCA/IgG p<0.05、EA<IgG p<0.001)。しかし、VCA/IgG及びEBV-associated nuclear antigen(EBNA)抗体では技師群と対照群との間に有意差はみられなかった。(4)CMV抗体陰性の放射線技師群にはEBV-VCA/IgG及びEA/IgG抗体異常陽性例はほとんどみられなかったが、CMV抗体異常陽性例の技師群ではEBV-VCA/IgG及びEA/IgG抗体異常陽性例がそれぞれ30.8%、53.8%認められた。以上のことから、潜伏感染しているCMVには低線量放射線の長期被曝による影響がみられなかったが、EBVは放射線被曝により再活性化している可能性が示唆された。
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