研究概要 |
放射線生物作用の初期過程は、「光学近似」によれば、軟X線領域にまで延びた「白色光の作用」に相当する。本研究では、光学近似が、分子損傷生成に適用できるかどうかを検討する。具体的には、DNAの構成分子である、チミン(T)およびチミジリル・チミジン(TpT)について、ビリミジダイマ-(以下、ダイマ-)、(6-4)フォトプロダクト(以下、(6-4))、分解生成物の生成作用スペクトルを遠紫外・真空紫外線領域(300-50nm)で調べた。 1.チミンは、10^<-5>torr以下の真空中でガラス板上に蒸着し、厚さの一定な薄膜とした。試料に真空中で、150-290nmの単色光を照射し、ダイマ-、および(6-4)の生成作用スペクトルを測定した。両者とも、150nmまで、生成が認められ、ほとんど同じスペクトルを示した。量子収率は、短波長に向けて、直線的低下した。我々のHPLC条件下では、分解生成物は認められなかった。平成2年度は、50nmまで波長領域を広げるとともに、^<60>Coγ線についても実験を行う。 2.TpTは、水溶液をガラス板に滴下し、空気中で乾燥した。ダイマ-、および(6-4)の生成は、150nmまで認められた。分解生成物(T,5'-TMP,3'-TMP)は、200nm以下で、顕著に認められる様になった。TとTMPの比は、200nmから低下し、150nmで約30%低下した。^<60>Coγ線による分解生成物の化学種と相対比は、真空紫外線の場合とほとんど変わらなかった。つまり、放射線の種類によらず、TpTの分子損傷は、同じになった。平成2年度は、^<60>Coγ線の結果との比較を、本格的に行う。また、オリゴヌクレオチドの種類を増やして、塩基数依存性と塩基配列依存性も調べる。
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