熱刺激エキソ電子線量計(TSEED)では、入射β線エネルギ-のうち素子表面に沈着したエネルギ-に比例してエキソ電子が放出されるので、逆にエキソ電子数から素子表面層におけるβ線の吸収線量を知ることが出来ることがわかった。次に、エキソ電子数とβ線の吸収線量との間の関係即ち両者の間の換算係数を求めるため非常に薄い入射窓の外挿電離箱を用いて、^<14 7>Pm、^<20 4>Tl、^<90>Sr・^<90>Yの各β線源からの吸収線量率を測定し、この値によってエキソ電子線量計を較正した。外挿電離箱の電極間ギヤップと飽和電離電流から次の式によって吸収線量率を計算した。dE/dt=1.04x10^<15> iw S_mT/Vp ここで、dE/dt=吸収線量率(mGy/h)、i=飽和電離電流(A)、w=ガスの平均電離エネルギ-(34eV)、 S_m=吸収物質のガスにたいする比 質量阻止能(1.13)、T=絶対温度(K)、V=ガスの体積(cm^3)、p=ガス圧(Pa)である。強さ3.7MBqの種々のβ線源を用いて実験した。外挿電離箱の入射窓の厚さをゼロに補正した場合の吸収線量率は1.78mGy/min.(^<14 7>Pm)、1.98mGy/min.(^<20 4>Tl)、1.67mGy/min.(^<90>Sr・^<90>Y)、であった。また、TSEEDとしてセラミックBeO素子を使用した場合、エキソ電子1個当たりの吸収線量は、90pGy(^<14 7>Pm)、88pGy(^<20 4>Pm)、75pGy(^<90>Sr・^<90>Y)であった。これらの平均値84Pgyを用いれば、±10%の精度でエキソ電子線量計素子表面の吸収線量を測定することができることがわかった。それ故、TSEED素子上に厚さ7mg/cm^2の皮膚に等価なフイルムを置いてβ線を照射すれば、入射β線の種類(あるいはエネルギ-)に関係なく簡単にβ線による皮膚線量即ち70マイクロメ-トル線量当量の測定が出来ることがわかった。なお、市販 の電離箱サ-ベイメ-タの頭部キャップをはずしてβ線の吸収線量率を測定した場合、かなり過少評価になることもわかった。
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