本研究は、在日華僑社会の地域的特色を明らかにするとともに、それらの特色の形成要因について考察することを目的とした。分析にあたっては、東南アジアにおける華僑社会と比較検討を加えた。 平成元年度は、2年間の研究計画の初年度にあたり、まず、関係する内外の文献試料の収集に力点を置き、東京・京都・長崎などで資料収集を行った。その過程で、第二次大戦前の華僑関係の新聞記事が、きわめて重要な資料となることがわかった。これらの文献資料に関しては、資料整理の補助を学生アルバイトに依頼した。また、科学研究費補助金で購入したパ-ソナル・コンピュ-タにより、デ-タ-ベ-スの作成およびデ-タの分析を、非常に効率よく行うことができた。 本年度の調査・研究では、在日華僑社会の居住・経済活動・社会組織文化などの歴史的推移に関する考察が主体となった。この種の研究では、同時代の東南アジアの華僑社会や中国の社会状況と、相互に比較しながら分析することが不可決であることを再認識した。今後は、在日華僑社会の現状の把握と、その背景に関する要因分析が重要な課題になってくると思われる。なお、平成元年8月には、科学研究費補助金「国際学術研究」でシンガポ-ル・マレ-シアの華僑・華人社会の調査を実施できたことは、本研究の遂行の上でも、きわめて有意義であった。 研究計画の最終年度である平成2年度には、入手したデ-タを整理・検討するとともに、横浜・神戸・沖縄などにおいて、インテンシブな調査を重ねながら、研究のまとめを行っていきたい。
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