研究概要 |
溜池がもつ環境保全機能のうち,治水機能・レクリエ-ション機能の側面について研究した。まず,播州平野の稲美町溝ケ沢池を例とする治水機能につき調査した。その結果,枯川流域の都市化の進展に対して,浸水被害防除を目的とする防災溜池工事が施行され,この事業で浸水被害防除を河川改修によるよりも低廉に実施することができただけでなく,堤体補修・池底の浚渫等も併せて行うため農業水利側にとっても有益であることが明らかとなった。また,溜池のレクリエ-ション機能では,兵庫県の自治振興事業による社町平池公園事業を例として研究した結果,利水者側が溜池を無償で町へ貸しつけ,維持管理費のすべてを町負担という契約が両者間でなされ,親水空間としてレクリエ-ション活動に寄与していることが明らかになった。なお,鴨川ダムからの農業用水の安定供給こそ,レクリエ-ション機能の計画的な利用を規定していることが確認できた。 さらに,溜池のレクリエ-ション機能については,ほぼ讃岐平野を網羅する香川県下の児童・生徒の溜池観というかたちで質問紙法による調査(7小学校・4中学校・3高校の回答者総数1,528人)を実施した。その結果,小学校の児童では溜池との具体的な関わりも活発でそのイメ-ジも豊かであるが,中学校・高校の生徒にとって溜池は関わりもイメ-ジも希薄な存在となることを具体的に指摘することができた。溜池は急激な都市化のなかで景観的にも機能的にも大きく変質し,地域住民の意識のなかでも次第に希薄化する存在ではあるが,利水に限ることなく溜池の環境保全機能に着目し,この保全が地球規模の環境保全と不可分であると認識することによって新たな存在意義を見いだすことが可能となることが明らかとなった。
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