研究課題/領域番号 |
01580240
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石井 素介 明治大学, 文学部, 教授 (60061719)
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研究分担者 |
横山 秀司 明治大学, 文学部, 講師
久保田 義喜 明治大学, 農学部, 教授 (80205153)
長岡 顕 明治大学, 文学部, 教授 (50061990)
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キーワード | 災害 / ダム開発 / 集落移転 / 地生態学図 / 土石流 / 廃村化 / 過疎地域 / 地域社会 |
研究概要 |
1.本研究は、災害や地域開発に伴なう集落移転が村落を含む地域に及ぼす地生態的・社会構造的諸影響の事例分析を行い、その類型化の検討を通じて、過疎農山村における村落再編成の意義を究明することを目的とする。 2.調査対象は、重点地域として伊那谷を継続調査すると共にダム開発地域として福井県大野盆地を取上げた。 3.研究方法としては、現地の関係機関と集落移転の当事者に関する実態調査を行うと共に、航空写真判読と現地観察により対象地域の自然植生・土地利用変化を示す地生態学図を作成し、環境と社会の追跡調査を行った。 4.調査結果の要点は次の如くである。(1)土石流災害により集団移転した伊那谷四徳地区の場合、崩壊跡地の多くは30年の経過の間にかなりの植生回復が見られるが、カラマツ植林地等では住民離村のため間伐や下草刈等適切な管理がなされず、高木層の生育が阻害されて斜面の安定性を脆弱化させる傾向を生じている。(2)同じ伊那谷の大鹿村、飯田市等の高冷地集落の一部に廃村化現象が見られ、土石流・大火等災害を契機とする流出の場合が多いが、主たる要因はむしろ1960年代の高度成長に伴なう製炭・養蚕の衰退など過疎化要因と共通である。(3)福井県の九頭竜川水系では早くから電源開発が進められ、ことに支流の真名川流域では1950年代からダム開発に伴なう水没集落の下流大野盆地への移転入植が行われてきた。この千歳地区等への集団入植は、農業水利改良等の基盤整備事業と併せて実施された関係もあって定着に成功したが、市街地に移転した旧村民は分散化し、かつての共同体的社会結合は年一回の会合により辛うじて維持されている状況にある。(4)大野盆地では真名川の洪水氾濫とダム建設、水田地帯の区画整理、市街地融雪装置の普及等のために地下水の枯渇現象が顕在化し、その対策が移住者を含む地域社会の課題となっているが、開発の及ぼしたインパクトの一例とも見られる。
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