表記の研究課題についての研究計画は今年3月で終了する。計画の開始から終了まで3カ年を費したのであるが、この間に得られた資料はかなりの量になる。それらの内容は、桜島周辺数地点での雨水のpH値と水質、同じく湧水・河川水の水質、及び若干の土壌に関する情報に大別できる。以上の内容について、研究計画書の手順に沿うよう実施し、ほぼ予定通りに遂行できたので、以下に本研究によって得られた成果、知見等について概要を報告する。 1、鹿児島大学屋上に設置した簡易採水器及びデポジットゲ-ジによる一降水と2週間毎の積算降水のpH値の月別平均値は平成元・2年度ともほぼ4.0〜5.0の範囲で推移した。また、寒候期(9〜2月)と暖候期(3〜8月)の比較でみると前者が若干高く現れる傾向を示した。しかしながら、平成3年度は、月別平均値でみると5.0以上を示す月が目立って増加したことが特徴である。これは、この年の気象条件(特に風向)と火山活動との関連によるところが大きいためである。 2、雨水の溶存成分との関連でみると、調査地域で測定された成分量は噴煙・噴火活動に対応して上下し、(従って降灰量との関連)、火山活動が水文環境に及ぼしている影響は顕著である。酸性化物質の含有比率を調べてみると、SO^<2->_4とCl^-の比率が大きい時に低pHとなっていて、北米、北欧の場合のSO^<2->_4とNO^-_3の構成比とは異っているのが特徴的である。これら物質の成分化やフッ素イオンの量によって酸性雨の起源を特定できる。 3、酸性雨の水文環境(土壌・植生も含む)への影響は若干認められるものの、これらが長期的な蓄積過程にあるのかあるいは緩衝能により現状維持か可能なのかについては明きらかになっていない。今後の研究課題である。上記の詳細なデ-タは4月末頃印刷公表の予定である。
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