研究概要 |
任意地点における斜面縦断形の時間的変化すなわち斜面発達を、その変化の主要な要因の関数として表す実体的経験式を確立することを目的として、比較的に簡単な初期条件をもち、しかも削剥年数の推定も容易な河岸段丘崖を対象に研究した。本年度に調査した段丘崖は、埼玉県荒川沿岸、長野県犀川沿岸および静岡県大井川沿岸にそれぞれ発達する河岸段丘崖であり、それらは気候条件、構成物質および離水年代の異なっている。 3河川沿岸の段丘崖は、一般に頂部凸形部・中部直線部・基部凹形部の3区間に区分されるが、任意地点の段丘崖の各区間の傾斜および段丘崖全体の平均傾斜は、他の条件が同じならば、一般に1)段丘崖の年代が大きいほど減少し、2)比高が小さいほど小さく、3)受け盤斜面より流れ盤斜面で小さく、4)基盤岩石の強度が小さいほど小さい。ただし、比高の影響は現成の段丘崖ではほとんど見られず、古い段丘崖ほど大きい。また、基盤の相対傾斜の影響はそれが45°内外のとき最も著しいが、古い段丘崖であるほどは小さくなる。 これらの資料から、調査地域の任意地点における段丘崖の3区間の傾斜および平均傾斜を表す経験式を、次の形で確立した。すなわちθ=α{(T/H)・(pρw)/(IγS_cI_d)}-βを提唱した。ただし、これらの諸式において、θ=θ_<cv>,θ_<st>,θ_<cc>またはθ_<mcan>(°)、T=段丘崖の離水年代(ka)、H=段丘崖の比高(m)、p=調査地域の年降水量(mm/yr)、ρ=斜面発達に間に運搬される物質の平均密度(gf/cm^3)、w=段丘崖上の単位幅(m)、I_r=基盤岩石の有効相対傾斜示数(無次元)、S_c=基盤岩石の圧縮強度(MPa)、I_d=基盤岩石の不連続示数(無次元)である。また、αとβは無次元の定数であり、両者はθ_<cv>,θ_<st>,θ_<cc>およびθ_<mcan>についてそれぞれ異なった値をもつ。 調査地域の任意地詞での、任意のTにおける段丘崖3区間および段丘崖全体のそれぞれの減傾斜速度は、p,ρ,S_cおよびI_dがTとともに変化しないと仮定すれば、dθ/dT=-αβ{Pρw)/(HIrS_cI_d)}ーβT-(β+1)として求められる。
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