我々は塩基性蛋白質、とりわけリボソ-ム蛋白質に対してきわめて高い分離能をもつ″RFHR″二次元ゲル電気泳動法を開発し、これによって大腸菌のリボソ-ムから5種の新しい蛋白成分(ABCDおよびE)を発見した。これら新しい蛋白成分のアミノ酸配列を解析し、これをもとにして遺伝子解析を行い、全ての遺伝子を決定することができた。即ちA、B、C、DおよびEの遺伝子は夫々37.6分、72分、88.5分、33分および22分に存在する。リボソ-ム蛋白質の統一命名法にもとづいて、A、B、CおよびDは夫々L35、L36、preL31、S22と名付けられた。このように新しい蛋白成分が発見されたのは、1971年に命名法が統一されて以来初めてのことである。この蛋白成分の追加によって、リボソ-ム類粒内の蛋白成分間のトポグラフィ-や、リボソ-ムの機能と構成成分との関係についての従来の知見を見直す必要が生じている。一方Eはリボソ-ムの精製過程で、高塩濃度処理によってリボソ-ム類粒から離脱することから、リボソ-ム構成蛋白というより6リボソ-ムと相互作用するファクタ-として分類することにした。細胞の増殖のlog phaseからstationary phaseへの移行の詳細な解析を行った結果、Eは70Sリボソ-ムのダイマ-化と挙動と共にして、stationary phaseで出現し、70Sダイマ-(100S)に局在し、70Sモノマ-や遊離の50S、30S中には存在しないことが明らかとなった。100SとEのモル比が1対1となることから100S形成に関与することがつよく示唆された。我々はEを″ribosome modulation factor″と命名し、リボソ-ムを100S化することで蛋白合成活性と調節する機能を6つと考えている。以上の結果はPros、Natl、Acod、Sci、USA誌上に1990年4月に発表された。
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