研究課題/領域番号 |
01580262
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大木 和夫 名古屋大学, 工学部, 助教授 (80115394)
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研究分担者 |
松岡 審爾 名古屋大学, 工学部, 助手 (90190420)
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キーワード | イノシト-ルリン脂質 / カルシウムイオン / 情報伝達 / 相分離 / 膜物性 / 生体膜の構造 / 静電相互作用 / 疎水相互作用 |
研究概要 |
初年度はまず、刺激受容伝達応答時のイノシト-ルリン脂質代謝系で重要な役割を果たしている酸性リン脂質のうちホスファチジン酸についてその膜物性を研究した。より生体膜に近い条件で研究を進めるために、主要な膜リン脂質であるホスファチジルコリおよびホスファチジルエタノ-ルアミンとの3成分系人工膜を初めて導入し、高感度示差走査熱量計や電子スピン共鳴装置などを用いて、静電相互作用が膜の構造と物性に及ぼす効果を詳細に検索した。その結果、カルシウムイオンによるホスファチジン酸の相分離は陽イオン/陰イオン比に依存して、近距離領域そして遠距離領域へと二相性に誘起されることを明らかにし、Chcm.Phys.Lipidsに報告した。さらに、膜タンパク質のモデルとして陽イオン性ペプチドのポリリジンを導入し、膜構造と膜物性に及ぼす効果を検討中である。一方、プロテインキナ-ゼCと膜脂質との相互作用には疎水性相互作用の役割が大きいと想像されるので、膜タンパク質の疎水性領域のモデルとしてメリチンを導入し、ホスファチジルコリンとの相互作用を示差走査熱量計で検索した。その結果、タンパク質の疎水性領域とリン脂質の疎水性領域の整合性が生体膜の構築に重要であるとのモデルを提起し、Biochem.Biophys.Res.Commun.に発表した。この研究は、リン脂質をホスファチジルエタノ-ルアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンに拡張して、詳細な検討を行なっている。以上の研究については、膜における静電相互作用と疎水相互作用を考察した総説にまとめて「表面」誌に発表した。また、第2年度に向けて、イノシト-ルリン脂質代謝系で刺激受容時に生成するジアシルグリセロ-ルの膜物性の研究を開始した。
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