音声発声時に同時に唇から放出される呼気流情報を発声・発音訓練に利用し役立てることが本研究の目的である。そこで呼気流情報を検出するために直径5μmのタングステン線を用いた熱線流速検出器を作製した。この熱線検出器を5組作製し呼気流の検討を行った結果、呼気流は発声者の唇前方空間の水平方向には正面から角度10度以内に放出されるが、垂直方向には発声音韻により呼気流放出の方向が異なり又かなりの範囲に複雑な様相を示すことがわかった。それで発声者の垂直面内の正面より下方に角度10度毎8点、正面より上方10度に1点正面の左右水平方向10度に2点、計12点の流速を同時に計測できる装置を作製した。そしてその計測結果はAD変換インタ-フェ-スを通しパ-ソナルコンピュ-タ(PC9800 Ra5)に取り込み記録し解析するシステムを作製した。これを用い健聴者、すなわち正常な発音の出来る被験者の破裂音または摩擦音を含む〔子音+母音〕及び〔母音+子音+母音〕の音節音声発声時の呼気流を計測した。その結果子音から母音への渡り部及び母音から子音への渡り部での呼気流速の変化パタ-ンは山形波形を示すことが多い。そしてその山形波形の鋭さ、形状、ピ-ク値、ピ-クの出現する位置等は音韻特に子音の種類との相関がかなり強いことがわかった。又これと共に聴覚系に障害があり発声・発音が完全でない被験者(音声を用いたコミュニケ-ションにはほぼ支障が無い程度)1人についても前と同様の検討を行った。受聴して異常を感じる音韻の呼気流パタ-ンは健聴者のそれとはかなりの違いがあることが確認されたがしかしまだ定量化には至っていない。そこで来年は発音の完成度が種々異なる被験者についての検討を行い定量化をすることが必要である。それから未だ検討を行っていない音韻についても検討を行わなければならない。
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