数学における問題解決モデルの構築と学習支援システムへの応用

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01580283
• 研究機関: 拓殖大学
• 研究代表者: 竹谷 誠 拓殖大学, 工学部, 助教授 (90197343)
• 研究分担者: 寺田 文行 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30063324) ; 中村 直人 拓殖大学, 工学部, 助手 (20201676)
• キーワード: 数学教育 / 問題解決プロセス / 数学的知識 / 戦略的知識 / 学習環境 / 問題解決支援システム

研究概要

本年度は問題解決プロセスの認知構造分析とそのモデル化に重点をおき以下のアプロ-チを行った。
a)学習者の問題に対する認知・理解・解釈プロセスの解明
既に開発したマルチメディアCAIシステム(THEシステム)の高校数学教材デ-タなどを用いて、生徒の問題解決プロセスとその要因(知識)を分析整理を行った。まずその切口として問題解決のプロセスを問題把握過程、論理的展開過程、具体的思考過程、記述過程に区分し、それぞれの過程において、定義・定理・公式等の“数学的知識"と、問題を把握・分析し解法の道筋を計画して数学的知識を適用するための“戦略的知識"に整理した。その結果として後者の戦略的知識は問題の状態と解決過程の目的により大きく(1)条件ほん訳戦略、(2)目標ほん訳戦略、(3)未知削減戦略、(4)変形戦略(乗法型 加法型)、(5)特殊性利用戦略、(6)グラフ→式化戦略、(7)式→グラフ化戦略、(8)具体化戦略の8つの範疇に分類された。次年度はさらに詳細な部分の検討を行う予定である。
b)学習者の問題解決プロセスの構造化/定式化(表現法)の応用
先に述べた問題解決のプロセスを応用した学習支援システムの第一近似として以下の新たな学習環境を提案した。第1のシステムは、学習者がそれまでの解答と異なる発見的な解法に気づき自ら新たな戦略的知識を獲得することを支援する問題解決法ガイダンスシステムである。とくに、本システムでは、発見的な解法は学習者と同様に獲得しながらガイダンスする機能を有する。第2のシステムは、THEシステムの数学的知識による順次的コ-スウェアが参照する問題デ-タベ-スにおいて、解答や数学的知識分野などのデ-タに、さらに戦略的知識の分類を付加することで、戦略の関連性に基づく学習者の自由探索を可能としたシステムであり、戦略的知識の一般化の学習を目的としている。

研究成果

• [文献書誌] M.TAKEYA,N.NAKAMURA et.al: "Multipule Learning Environment using THE Multimediad CAI System" IFIP.Proceedings of 5th World Conference on Computers in Education. (1990)
• [文献書誌] M.TAKEYA,N.NAKAMURA et.al: "An Evaluation of T.H.E. CAI System Based on Students'Opinion" J.Sci.Educ.Japan. 13-2. 102-108 (1989)
• [文献書誌] 竹谷誠: "選択肢回答のアンケ-ト項目の順序特性" 電子情報通信学会論文誌A. J72-A. 825-833 (1989)
• [文献書誌] M.TAKEYA: "New Environments for Guided Discovery Learning in Mathematical Education" The 3rd Sino-Japanese Symposium on Science Education. 123-128 (1990)
• [文献書誌] 中村直人,竹谷誠: "学習者の問題解決戦略を支援するシステム" 日本科学教育学会第13回年会論文集. 13. 365-368 (1989)
• [文献書誌] 中村直人,竹谷誠: "問題解決戦略の自由探索法に基づく数学学習支援システム" 情報処理学会第40回全国大会講演論文集. 1. 3-4 (1990)
• [文献書誌] 竹谷誠(分担著): "教材構造グラフの活用と評価(CAIハンドブック)" フジ・テクノシステム, 5/1169 (1989)