児童・生徒、あるいは成人が、自らの認識過程やその所産についてどのような理解をもっているか、すなわち「知識」に関してどのような反省的理解(メタ認知)をもっているか、などの実態を明らかにするために、下に述べるような調査をおこなった。予備的調査として、質問紙調査のほかに、集団による話し合いや個人面接を併用したが、成人においても極めて限られたメタ認知しかもたないことがわかった。 1)課題の困難度に気づくか(問題解決をする自分の能力と課題との関係を考えるか)。つぎの2種類の課題に対する反応の首尾一貫性をみる。(1)問題を2つ対にして呈示し、どちらのほうが難しいかを尋ねる、(2)上の課題に用いた問題を1問ずつ与え、困難度を評定させる。 2)「知る」ことについての反省的理解をもっているか。種々の命題や映像を呈示し、それについて、「知っているか」「(知っている場合には)いかなる意味で知っているか」を説明させる。 3)理由に関する説明について反省的理解をもっているか。説明を内容と様態(経験的・動機的・演繹的)によって分類したM.L.Donaldsonの分類に従って例文を選び、対にして呈示した例文について、同じ種類の説明であるかどうかを尋ねる。(判断する際の基準についても尋ねる) 4)説明文の情報の過不足を判断できるか。ひとに道をおしえる説明、特定の幾何学図形をかくことを要求する説明、理科の実験手続きに関する説明などについて、必要な情報を欠く説明や、余分な情報を含む説明を用意し、(1)その説明で目的地に行ったり、図形をかいたり、実験をおこなったりすることができるかを尋ねる、(2)説明文のなかの必要な情報や余分な情報を指摘させる。 5)「誤り」の価値がわかる。自然現象の説明について、誤っているが面白いアイディアを含む文章を呈示し、評価させる。
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