本研究は、火山性土石流による災害防止予測を目指してその流動特性を解明するために、桜島の持木川において昭和61年度から続けている現地観測をさらに継続、発展させる形で行われた。過去の研究の経過としては、昭和62年7月に、魚群探知機を改造した超音波距離計と放射温度計を橋桁に取り付け、建設省の設置した検知線を利用して、土石流の水位を測定することに成功した。次いで10月には振動計を1基取り付けた。昭和63年には、超音波距離計を撤去し、振動計をもう一基増設したが、土石流による温度変化のみ記録できた。平成元年度には以下のような観測行った。1)4月下旬に振動計及び放射温度測定装置を持木川の観測所に設置し、さらに振動計を一基増設し3次元で振動を捉えられるようにした。2)8月上旬から9月下旬にかけて土石流の発生が数回あったが検知線による観測システムがうまく働かず、データは収集できなかった。3)新たに開発した超音波距離計・振動計および放射温度計からのデータを記録し、これを電話回線を通して送信できかつ観測システムを監視できる遠隔操作システムを開発した。この完成は10月であった。4)収集システム用の電話回線を設置しようとしたが、九州大学内の外線電話には、回線数の限界があり、また鹿児島高専では事務手続き上の問題から設置に至らず、従来どうりの観測システムとした。本年度は土石流の発生回数が少なく観測装置の故障からその少ないチャンスを逃してしまった。これまで得られた、水位及び温度データを解析し次の知見が得られた。水位データから自己相関関数を求めたが従来から示唆されているような転波列の存在を表す兆候は見られなかった。また、土石流の摩擦熱による温度上昇は、収集されたデータから見る限りわずかであり、発熱現象は認められなかった。なお、現在観測システムを整備中であり、次年度以降のデータの集積を期している。
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