1989年8月10日から9月14日まで、北海道後志管内羊蹄山及びそハ周辺に雨量計19台、風向・風速計4台を設置し、自記記録を取得した。また、8月26日から9月9日まで、羊蹄山から約23km南方の洞爺村成香にドップラ-レ-ダ-を設置し、半径64km内のレ-ダ-エコ-及びドップラ-速度成分の空間分布を連続観測した。観測モ-ドは15分間隔、4〜5仰角のPPIスキャンと4〜5分位のPHIスキャンを主に用いた。 ドップラ-レ-ダ-観測期間中の8月28日に、台風17号が観測領域のすぐ東側を北北東進した際の風向・風速の鉛直時間断面をVAD法で解析し、台風の接近時に、地上高度1.5kmz付近に30m/sの下層ジェットの存在を確かめた。また台風前面の弱い層状エコ-領域において、羊蹄山の風下に山越え気流と孤立峰を迂回する気流の合成による速度成分分布が得られた。この気流系の上昇流と下降流の分布とエコ-強度の分布は良い対応を示した。 台風に続いて、8月31日の閉塞前線通過時及び9月3〜4日の低気圧通過的の降雨分布とエコ-内の気流を観測した。また、それ以外の降雨についても雨量や風のデ-タが得られた。 多くの場合に、羊蹄山の一般風にたいして左右のふもとの降雨量分布に相違がみられた。しかし、この相違は、孤立峰を迂回する気流ばかりでなく、周囲の他の山岳の影響や、エコ-そのものの発達のステ-ジや持続性、さらには一般風の鉛直シァ-なども関係していると考えられる。そこで、ドップラ-レ-ダ-、雨量計及び風向・風速計の観測デ-タに、観測領域内の気象庁AMeDAS及び札幌の高層デ-タを加えて、羊蹄山周辺の風系に対する大雨域の変動特性について詳細な解析を行なっている。
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