土木構造物が地震による被害を被った場合、被害程度が軽微であれば修復あるいは補強して使用を続けられることが多い。最近は特にその傾向が強く、今後ますます修復構造物の数は増加することが予想される。都市の耐震化を考える場合、このような修復構造物についても耐震性を評価し、あるいは耐震基準を設定する必要もでてきた。そこで本研究では、まず、樹脂をひび割れ部に注入して修復したRC部材の耐震性に関して検討した。2次元の有限要素法を用いて片持梁をモデル化し、ひび割れ位置による固有振動の差と修復効果を調べた。ひび割れにより固有振動数は5〜10%低下し、また、ひび割れパタ-ンによってもその低下の度合いが変わってくる。特に片持梁の固定端付近のひび割れが、固有振動に対して大きな影響を持っていた。しかし、ひび割れ部に樹脂の剛性を与えた修復部材モデルでは、ひび割れのない部材とほぼ同じ(1〜2%の低下)固有振動数となった。樹脂剛性をいろいろ変化させて計算した結果、コンクリ-トの20%の剛性があればひび割れのない部材と同じ固有振動数となることが判明した。(なお、実際のエポキシ樹脂はコンクリ-トの約10%の剛性である。)また、いずれの場合もモ-ド形状には変化がないことが確認された。また、節点間を弾性パネでつないだ修復部材のモデルと、ジョイント要素でつないで滑りや剥離を表現した未修復部材のモデルを用いて地震応答計算を試みた。入力地震波は、El Centro NS記録の強震部分10秒を用い、各モデルの時刻歴応答を求めた。その結果、固有値解析からも予測されるように、修復部材ではほとんどひび割れのない部材との差は見られなかった。それに対して未修復部材は、最大応答値はほぼ同じであったが、その後振動がすぐには減衰せず、応答波形は異なったものとなった。
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