崩壊・土石流等による地表環境に及ぼす影響は樹木の構造の変化に反映したり、土砂移動に伴って付近の湖沼や海底の底泥堆積物の堆積構造にも影響を及ぼしている可能性がある。本研究ではこの観点から、過去において崩壊等が頻発しその痕跡が樹木の年輪や湖沼堆積物等に認められる可能性があり、かつ近年における資料が比較的整備されている六甲山系を中心とした地域を対象地とし、堆積物あるいは樹木の採取・分析を行いそれらの時系列変動の解析を行った。 散木の年輪にかんしては過去において崩壊の多発している六甲山系地誠とあまり崩壊が多発していない六甲山地域の北部を対象として、樹齢が60〜250年のアカマツの年輪幅の時系列解析を行った。その結果いずれの地域の樹木にも25〜30年という周期が存在することが明らかになった。また、この周期は崩壊多発地域では明瞭であるが非多発地域ではそれほど明瞭ではないという顕著な差が認められた。この周期はこの地域において過去100年間における崩壊多発に関係した雨量特性の周期に対応するものであり、因果関係は明らかではないが、共通の気候変動に関係するある種の傾向を示唆するものと思われる。 またほぼ同じ地域においてため池等を利用して過去50〜100年程の底泥堆積物を採取し粒度組成等の分析を行ったが、豪雨のため崩壊が多発した時期においては、多発地域の堆積物は顕著な粗粒化を示すが、非多発地域では粗粒化はそれほど顕著ではないことが示され、崩壊等による土砂移動は湖沼の堆積物にもその痕跡を残していることが明らかなった。
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