昨年度までに、対象物質として取り上げた2-クロロフェノ-ル(以下CP)の天然水中における模擬太陽光照射実験において、CPは間接光分解を起すこと、全光分解に対する間接光分解の寄与率は北潟湖において年平均15%に達することなどが明らかになっている。 本年度は単色光照射実験を行い、間接光分解の波長依存性および間接光分解機構の解明に重点をおいて検討を行った。対象とした北潟湖および武周ケ池に関して、以下に得られた知見の概要を示す。 (1)両湖沼において、間接光分解速度定数は短波長側で大きいが、全光分解に対する間接光分解の寄与率は短波長側(295nm)の約7%から長波長側になるにつれて増大し、320nmでは20〜40%であった。長波長側では北潟湖の寄与率は武周ケ池の約2倍であり、富栄養化に伴う植物プランクトン等の一次生産にもとづく溶存有機物の寄与が示唆された。 (2)間接光分解機構は多数提案されているが、本年度は一重項酸素(以下^1O_2)の寄与について検討した。その結果、短波長側では間接光分解における^1O_2の寄与率は1〜2%と小さいが、長波長側では約20%を示した。短波長側ではアセトフェノン等の三重項増感剤により、増感分解を起すことから、溶存有機物からCPへのエネルギ-移動機構による分解が起っていると推測された。 以上、CPの間接光分解機構に関して重要な知見が得られたが、さらに光化学的に生成する他のオキシダント(OHラジカル等)あるいは水和電子、ス-パ-オキシドなどによる分解の評価を行って、天然水中における間接光分解を総合的に明らかにする必要がある。
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