主に、植物の葉を対象として、原子炉(KUR)を用いて放射化分析した。その結果、特異元素ないし元素群を集積する多種類の植物が見出された。トウダイグサ科の植物の1/3程度がCoを特異的に集積する性質があった。モチノキ科とヤナギ科とに属する植物は、ZnとCdを集積する性質が認められた。一方、ウラジロ科及びシシガシラ科に属する羊歯植物は希土類元素Ba、Ra、Ac金属等を集積する性質があった。これらの結果を総合すると、Zn、Cd等を集積する植物は、どの科においてもAl、希土類元素等を集積しないし、他方Al、希土類元素等を集積するどの科の植物においても、Zn、Cd等を集積しない。これらのことをPearsonが提唱するソフト及びハ-ドの金属イオンと関連づけて分類するとすれば、ヤナギ科、モチノキ科はソフトな金属イオン(Ag、Cd、Zn等)を集積し、ウラジロ科、ツバキ科はハ-ドな金属イオン(Al、希土類元素等)を集積する傾向をもつ植物であると分類できた。もちろん、これらのいずれかのグル-プにも属さない中間の性質をもつ植物群もあり、例えば、ヘビノネコザのように育成する土壌環境に応じて特有な金属イオンを集積するものもあった。土壌の質と植物体内の元素分布との関係は簡単ではないが、酸性土壌ではAl、希土類元素、Mn、Co等の濃度が一般に増加することが明らかとなった。また、放射化分析では感度の悪いPb、Cd、Cu、P等の元素についてファ-ネスタイプ原子吸光分析装置、ICP発光分光分析装置、蛍光X線分析装置等を用いて元素と植物群との相関関係の検討の手がかりを得た。
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