200海里時代を迎え、沿岸漁業の再開発は焦眉の社会的課題となってきている。愛媛県と五洋建設(株)は生産性の低い沿岸沖合い漁場を再開発するために、瀬戸内海豊後水道東部海域水深50mの海域に、高さ10m幅20mの衝立て状の人工湧昇流構造物を設置し、強い潮流がこの構造物に衝突し、湧昇することで、海底近くの未利用の栄養塩を有光層内に持ち込み、植物プランクトンの増殖を測ることを試みた。 1987年の構造物設置前と1988年の構造物設置後の海洋観測結果の比較から以下のことが明らかとなった。 1)M_2分潮流の振幅と鉛直乱れ成分が増加した。 2)低温で栄養塩濃度の高い底層水が有光層まで湧昇した。 3)小潮時にのみ植物プランクトン濃度は増加した。大潮時には鉛直乱れが大きくなるために、高い栄養塩濃度にも関わらず、植物プランクトンは有光層にとどまることができないで、有効に増殖できないものと考えられる。 4)動物プランクトン濃度は増加せず、底棲生物は減少した。 5)魚群探知機による観測の結果から、流速が速い時には構造物周辺に魚群が蝟集していて、構造物は湧昇効果のみならず、漁礁効果も発揮していることがわかった。 6)上記1)〜2)の観測結果は鉛直2次元数値モデルによって、良く再現された。
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