研究概要 |
船舶の船底防汚塗料から溶出する有機すず化合物の溶出量を評価、制御するための定量分析方法として、パラジウム添加炭素炉原子吸光法の可能性を検討した。炭素炉原子吸光法の加熱条件は有機すず化合物の揮発損失を抑えるため、連続的かつ比較的長時間の条件とした。 1.研究成果 数種の検討に止まっているが、パラジウム錯化合物の増感効果が確認できる濃度は、10mgPd/lであり、これは筆者らがその他の金属分析に際して検討した結果とよく一致していた。 増感効果はその錯化合物の溶媒への溶解性の大小によるのではなく、錯化合物が炭素炉内で加熱過程の早い時期に分解することが大きく関与していた。 最も高い増感効果を示すジクロロビスアセトニトリルパラジウム(II)を添加して行う炭素炉原子吸光法によって、定量限界は0.11mgSn(SB=2)であった。酸化ビストリブチル錫および二塩化ジブチル錫について、回収率を検討した結果、それぞれ102,106%(塩化トリ-n-ブチル錫=100)と高い回収率を得た。 2.今後の展望 今後は、トリフェニル錫への本法の応用を検討していく。トリフェニル錫は他の有機錫化合物に比べて高い沸点を持つことから、加熱過程での揮発損失はほとんどなく、他の有機錫化合物と同程度あるいは、より高い感度で定量可能になるものと考えている。
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