高効率かつ長寿命のエネルギ-変換システムの構築を目的として、研究を実施した。具体的には、Ru(bpy)^<2+>_3などの増感剤の光照射により生成した励起電子を、多孔質陽極酸化アルミニウム皮膜のミクロポア内に保持したビオロ-ゲン誘導体(例えばオクタデシルメチルビオロ-ゲン:ODMV)などの電子伝導体を介して効率的に電荷分離することにより目標の達成を図った。昨年度は皮膜の片面に電極を配置することによる光電変換に成功しており、本年度は本システムを用いる光の化学エネルギ-への変換を目指して、小孔径皮膜作製干すの確立と、作製皮膜の隔膜としての特性評価、さらに隔膜を介する光励起電子のベクトル輸送による化学反応を実現した。 1.小孔径陽極酸化アルミニウム多孔質皮膜の作製と隔膜特性の評価隔膜としての使用を目的に小孔径の皮膜作製技術の確立を図り、10%硫酸溶液中で5℃、バイアス電圧15Vの条件で作製することにより孔径12nmの皮膜を得た。所定の部分について20%硫酸-0.1MCuCl_2溶液で基板のアルミニウム、ついで4%リン酸溶液でバリア層を除去して隔膜とした。隔膜としての特性は増感剤であるRu(bpy)^<2+>_3の拡散挙動から評価した。拡散挙動は3.5×10^<-9>cm^2s^<-1>と非常に小さく隔膜として機能していることが確認された。 2.酸素飽和溶液/隔膜(OTS+ODMV)/Ru(bpy)^<2+>_3/TEA系での反応 上記の本法で作製した、電子伝達体(ODMV)をミクロポア中に保持した多孔質陽極酸化アルミニウム皮膜を隔膜とし二分したセルの一方に増感剤であるRu(bpy)^<2+>_3と電子供与体であるTEAを、他方に酸素飽和の水を入れ、光照射をすると酸素が還元され過酸化水素が生成した。膜内にODMVを含まない場合は還元はおこらず、光励起された電子がODMVを介してベクトル輸送されている事が確認され、本研究の基本的考え方が実証された。
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