1.個体電池の反応面は電極と電解質の接触面に限定されるため、電極の有効反応面積は非常に狭くなる。そのため高温固体電解質燃料電池は作動温度が高い割りには分極が大きく、特に空気極の分極特性に改善の余地がある。本研究は固体電解質を使うことに伴う反応面積の不利を電極中に酸化物を添加することにより解消しようとしたものである。 2.まづ固体電解質としてよく知られているジルコニア系、セリア系、酸化ビスマス系の三種類の粉末を白金電極に加え、空気極特性を測定した。その結果、無添加の白金電極に比べて著しく性能が向上した。この性能向上の原因を明らかにするため、電極の厚さと性能との関係を調べた。ジルコニアとセリアの添加の場合には、電極の厚さの増大による性能の向上は認められなかった。さらにパルス法による分極の遷移過程の解析結果や顕微鏡による電極表面の観察の結果から、ジルコニアとセリアを含んだ電極の内部には期待させた有効反応面は存在せず、これらの酸化物の添加効果は単に白金粒子の微細化に帰するべきものであることが分かった。一方、酸化ビスマスを含んだ電極には厚さの増大につれて性能の向上が認められた。このことは、電極がその内部にも有効反応面を持ち、液体電池と類似の作動機構により反応面が電極の厚さ方向に広がりをもつ結果であると解釈された。酸素イオン導電性酸化物以外の酸化物についても添加効果を調べたところ、。ZnO、Ga_2_3などに分極減少の作用のあることが分かった。それに対してTa_2O_5、Nb_2O_5には分極増大の効果が認められた。さらにMnO_2とCuOには電極の密着性を増す効果のあることが認められた。これらの酸化物は、酸化物極のような焼結性の低い電極材に対して優れた添加効果を示すものと期待される。
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