地球の温室化が問題となっている昨今、次世代を見据えた新たなクリ-ンエネルギ-の開発が急務と考えられる。そのクリ-ンエネルギ-の中でも、水素は水を原料とした非枯渇型のクリ-ンエネルギ-で、その利用価値は非常に高いものである。本研究は、熱化学反応により生成される高温状態の気体から連続的に水素を分離することを目的とし、天然ゼオライト原石を利用した分離セルを試作し、水素と窒素の二成分モデル混合ガスを用いた水素の分離実験を行つた。合わせて、温度調節器を備えて分離セルを試作し、水素の透過・分離特性に対する温度の影響を約290〜530Kの範囲で調べ、以下の知見を得た。 天然ゼオライト原石は、シリカ、アルミナを主成分とする推積岩で、細孔径80〜300Åを多く有する多孔質材料であることが分かった。また、常温における円盤型および円筒型分離セルを用いた場合、分離係数α=2.0(供給気体の水素濃度30%から46.2%程度に分離・濃縮される。)が得られた。更に、透過側圧力を大気圧以下にすることは水素の透過・分離特性の向上を促進することを認めた。また、円盤型よりも円筒型の分離セルの方が優れていることも分かった。中空糸膜との比較から、円筒型の分離セルは分離係数は劣るものの、水素の透過特性に優れていることを知った。これは分離に働くゼオライト原石の単位接触面積当りの細孔表面積が大きいことを示唆するものである。水素の透過・分離特性に対する温度の影響を調べた結果、温度が上昇する程分離係数が大きくなることが分かった。高温度場においても透過側圧力を大気圧以下にする操作が水素分離に対して有効であることを確認した。また、ゼオライトに含まれる水分が高温状態で離脱し、収縮することを認めた。従って、予め天然ゼオライトを焼成などの物理・化学的処理を施して機械的な強度を高める必要性のあることも認めた。
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