研究概要 |
リグノセルロ-スからの脱リグニンのためにPseudomonas属細菌TMY1009諸性質を使うことを考え、今年度は酵素の単離、性質の究明、酵素を使っての天然リグニン関連物分解を追究した。 Cγ脱離酵素についてリグニン関連化合物の一つ、erythro-1,2-bis(4'-hydroxy-3'-methoxy-phenyl)-1,3-propanediol(β-1型化合物)のγ位炭素脱離を行う酵素を菌体から精製し、活性を459.6倍向上させ、最終精製酵素の純粋性を電気泳動法により示した。さらに、精製した酵素について、分子量、性状、基質特異性、β-1型リグランモデル化合物の分解機構などを究明した。 リグノスチルベン-α,β-ジオキシゲナ-ゼ(LSD)について 菌体の抽出物を各種クロマトグラフィ-にかけLSD-1を分取した。精製により活性は100倍向上し最終段階で得られた酵素は電気泳動法で純粋性を示した。精製した酵素を用いての研究により、分子量、各種性状及び本酵素がグアヤコキシスチルベン型化合物に特異的に働く酸素添加酵素であることなどを明かにした。またLSD-1が含む鉄の性状も追究し、これが非ヘムの2価鉄で、失活しても添加二価鉄によって再活性化するのを示した。 本研究で見いだしたリグニン分解の手法の、天然リグニン関連化合物分解への適用可能性を追究した。爆砕リグニンは生菌で一部が分解し、またアルカリ処理した木粉の分解に酵素LSDは明確な促進効果を与えた。しかしバガスの糖化効率に菌体、粗酵素による前処理は何の効果も生まなかった。ブナ爆砕リグニン、エゾマツアルカリ蒸解リグニン(可溶部)及びチオリグニンへの粗酵素による前処理は何の効果も生なかった。ブナ爆砕リグニン、エゾマツアルカリ蒸解リグニン(可溶部)及びチオリグニンへの粗酵素の作用ではアルカリ蒸解リグニンで効果が認められた。サ-モメカニカルパルプには粗酵素は何の変化も起こさなかった。
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