研究概要 |
半導体物質の研究の中で「周期律化合物」の概念に基づいてVI族元素と等電子構造を有する新規化合物に関する可能性を探ってきたが、本年度は、引き続き超高圧合成法(例えば5.0GPa,1500℃)用いてB-S-Se系における固溶体およびII-IV-V_2化合物について検討した。 B-S系では、前年度にBSの高圧合成について報告したが、これは六方晶系a=3.052A、C=20,406Aの格子定数をもつβ-GaSeと同形の新規化合物であり0.14eVの活性化エネルギ-、+420μv/K熱電率を持つp型半導体である。粉末X線回折のRietveld法による構造解析を行なうと共に、定比性と合成条件についての相関性を調べた。また、この化合物にSeを固溶させると固溶体Bs_<1-x>Sex(0<x≦0.15)の合成できることが明らかになった。電気的性質に関しては、活性化エネルギ-が0.14-0.12ev、+500-550μv/Kの熱電率をもつことや、光学的な結果から不定比性の関与するp型半導体であることがわかった。また光学的吸収端も、Seの固溶量の増加に伴って3.75eVから3.49eVと小さくなることなどの知見を得た。 次いでB_2s(III_2-VI化合物)に加え、ZnP_2(II-V_2化合物)への展開を図り新たにZnSip_2やZnGeP_2の高圧合成研究を行なった。その結果、正方晶系カルコパィライト型構造を有するZnSiP_2(1400℃、5.5GPa)とZnGP_2(1000℃、5.5GPa)が得られた。それらの格子定数は、各々a=5.4048A、C=10.4246A及びa=5.4787AC=10.7509Aと求まった。さらに、3.0GPa、800℃では、立方晶系閃亜鉛鉱型のZnGeP_2(格子定数はa=5.4632A)が新たに合成された。この構造では、カチオンサイトをZn元素とGe元素がランダムに占めていることがわかった。光学的及び電気的な測定結果から、正方晶系ZnGeP_2では、不純物レベルに加えて、伝導に係わる深いレベル(約0.87eV)のあることが明らかになった。
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