研究概要 |
セラミックスや金属に高速に加速されたイオンを打込むことによって、今までにない非平衡状態化での物質合成、改質を実現することが可能である。本研究では、主に(1)^<18>Ar以下の軽元素イオンを、(2)最大150keVまで加速して(3)10^<16>〜10^<18>ions/cm^2程度のド-ズ量をタ-ゲットの遷移金属磁性薄膜やセラミックス高温超伝導薄膜にイオン注入して、磁気機能性に優れた金属系および金属-セラミックス複合系磁性薄膜材料の開発ならびに高温超伝導薄膜の特性改善を図った。その結果、特に遷移金属磁性薄膜へのイオン注入によって次のような研究成果、知見を得た。 1.α-Fe薄膜への窒素イオン入によって、従来から巨大磁化を持つのではないかと期待されていたα"-Fe_<16>N_2合成に成功した。([1]J.Appl.Phys.,vol.65,pp.4357-4361(1989),[2]Appl.Phys.Lett.,vol.54,pp.2536-2538(1989))さらに、窒素イオンの加速電圧とド-ズ量を制御しながら多重注入する事によって膜中の窒素濃度の均一化を図り、室温の飽和磁化がFeCo合金を上回る高飽和磁化薄膜を作製する事に成功した。([3]Appl.Phys.Lett.,vol.56,pp.92-94(1990))これらイオン注入窒化鉄薄膜の内部転換電子メスバウア-スペクトルの測定を行ない詳細に解析した。その結果、α"-Fe_<16>N_2には3つの異なる鉄サイトが存在し、それらは窒素原子からの距離に応じてそれぞれ第1近接、第2近接および第3近接と同定された。また、各サイトの鉄原子の磁気モ-メントはそれぞれ約2.2,2.3,3.5μBと求められた。(日本応用磁気学会誌、投稿中) 2.Co薄膜に酸素イオンを高濃度に注入することによって、Co-CoO複合磁性薄膜を作製した。この磁性膜は、非常に大きな交換磁気異方性を示すため、新しい非線形磁気機能性素子への応用が期待される。(IEEE Trans.on Magn.,投稿中)
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