種々の大きさと形状を持った有機分子を、電荷密度の異なるホスト化合物にインタ-カレ-ションさせることにより、ホスト層の持つ電荷密度の影響を調べた。電荷密度の高い化合物としてHTaWO_6・nH_2O、電荷密度の低い化合物としてWOP_2O_7を還元して得られるH_xWOP_2O_7・nH_2OおよびNaMoO_4を酸化して得られるMa_xMoO_4・nH_2Oを用い、これらの出発物質と有機試薬を回転反応装置あるいはオ-トクレ-ブ中で反応させた。 n-アミンとの生成物の層間距離の炭素数に対する依存性は、電荷密度の高い場合にアルキル鎖がほぼ層に対して垂直になることを示したが、電荷密度の低い場合に中性のアミンも同時に層間に取り込まれ、電荷密度の影響は顕著には出なかった。両端に官能基を持つn-ジアミンのインタ-カレ-ションでは、両端が陽イオンの位置に固定されるため電荷密度の高い場合には分子が長くなるとキンクを生じ、分子全体としての長さを短くするようになり、また電荷密度の低い場合には陽イオン間の距離が長いので分子は伸びたまま層に対して非常に寝てくるという結果が得られた。その他、ピリジンやアニリンおよびそれらの誘導体のインタ-カレ-ションの結果生ずる層内での分子の配列については現在検討中である。 なお、この研究の過程でHTaWO_6・nH_2Oは非常に強い酸性度を持った固体酸であり、pKaの種が0.6程度のものまでインタ-カレ-トし、さらに分子内に不飽和結合を持った分子もインタ-カレ-トすることがわかった。このような特異な性質を持つHTaWO_6・nH_2Oは固体酸触媒としての、あるいは層間での分子の反応による特異な構造の分子を生成するなどの機能を持つものとして期待される。
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