研究概要 |
本年度は、基材として順、逆両ミセルとポリイオン錯体を選び、スピロピラン(SP)のフォトクロミック特性がこれ等基材によってどのように変化するか検討した。特にSPに長鎖アルキル基、イオン性置換基を導入した場合の効果について詳しく検討し、発色体メロシアニン(MC)の会合体系成に関し重要な知見を得た。 (1)ミセル中での挙動‥‥水不溶性SPはCTAB,SDSなどのミセル水溶液中で正フォトクロミズムを示した。MCのλmaxはSPに長鎖アルキル基を導入すると長波長シフトし、MCがミセル疎水部にとり込まれることを示唆した。MCの熱消色速度(k)は同極性有機溶媒中より小となった。一方、これらSPは逆ミセル中でもミセル近傍の極性領域に存在することを示した。 水溶性SPは水中と同様逆ミセル中でも逆フォトクロミズムを示したが、その特性はミセルの電荷とSP置換基の電荷と関係していることを明らかにした。 (2)ポリイオン錯体中での挙動‥‥SPを低分子活性剤-高分子イオンからなる標記錯体中にとり込ませたキャストフィルムはフォトクロミズムを示し、その特性はSPの構造に依存して著しく変化した。即ち、通常のSPは錯体中の極性の高い部位にとり込まれ、MCの消色速度は同極性の有機溶媒中よりかなり減少した。長鎖アルキル基を導入するとSPは錯体中の疎水性部位に位置し、アルキル鎖の長さと数によってはMCは安定な会合体を形成した。一般に長鎖(C_<13>〜C_<30>)アルキル基を二本導入するとJ会合体を、中程度のアルキル鎖(C_<10>〜C_<12>)を二本導入するとH会合体を形成した。これらの会合体の形成しやすさと錯体中の活性剤のアルキル鎖の効果、SP濃度の関係や会合体の特性を明らかにした。
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