強磁性体フェライト超微粒子に生物学的リガンドを結合させ、それを生理活性物質の制御投与に利用する目的で、その基礎固めとして、エンドサイト-シスにおける膜動輸送の分子機構を高磁場勾配分離によって研究した。 1)径約5nmフェライトをアシアロガングリオシドとリン脂質でコ-トし分散させた磁気化リガンドを灌流肝細胞に投与した。リガンドは灌流液から速やかに肝細胞に取り込まれた。他の多くの特徴から、本リガンドは、本来肝細胞が取り込むタンパク質リガンドとかなりよく似た特徴を有していることが確認できた。 2)上記リガンドを取り込んだ肝細胞を取りだし、ホモジネ-トを磁性細線を充填したカラムに通し、高磁場下でリガンドを取り込んだエンドソ-ムを分離捕集した。フェライトリガンドの細胞への取り込み時間を変化させることによって異なった特徴のエンドソ-ムが得られ、それらを詳しく分析した。取り込み5分までのエンドソ-ムは、比重1.05付近にピ-クを呈し、その中にリガンドとその受容体が共に見いだされるのに対し、15分のものは1.05のピ-クと共に1.08のものがみられた。1.08の分画にはリガンドは存在するが、受容体の含量が非常に低かった。これらは、それぞれリガンド輸送の過程で順次生じる初期及び後期エンドソ-ムであると考える。 3)上述の研究で明らかになった各エンドソ-ムの組成を分析した。これらの脂質組成は大差ないが、各分画に共通するタンパク質とそれぞれ固有のタンパク質を検出した。エンドソ-ムは固有のタンパク質を保持しながら、特徴的なタンパク質が膜と共に負荷離脱し、これらがエンドソ-ムの細胞内標的部位への到達、構成要素の選別を担うと推定した。これらのタンパク質に対する単クロ-ン抗体を作成しそれを用いたより詳細な分析を続けている。
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