本研究は平成元年度、1)ヘテロ原子を含有する新しいポリアセチレンの合成と特性、および 2)置換ポリアセチレンの光分解挙動、について検討した。以下に研究成果の要旨を述べる。1.ヘテロ原子を含有する新しいポリアセチレンの合成と特性の解明 ヘテロ原子の中でフッ素を含有するポリマ-はしばしば特異な性質を示す。そこでフッ素含率の高い2.5-(CF_3)_2-フエニルアセチレンの重合を検討した。このモノマ-はWおよびMo触媒により高い収率でポリマ-を生成した。生成ポリマ-はP-(CF_3)_2C_6H_4に可溶の暗褐色固体であった。ポリ(フエニルアセチレン)より高い熱安定性を有していた。 別のタイプのモノマ-として3-カルバゾリル-1-プロピンの重合を検討した。含窒素モノマ-は触媒を失活させ重合しないことが多いが、このモノマ-は種々のMo、W触媒により80%前後の高い収率でポリマ-を生成した。ポリマ-は黄色固体で、いずれの溶媒にも不溶であった。 2.置換ポリアセチレンの光分解挙動の検討 紫外線照射により脂肪族二置換アセチレンのポリマ-であるポリ(2-オクチン)では分子量が数10万から数千にまで著しく低下した。ポリ(1-Me_3Si-1-プロピン)をはじめとする多くの置換ポリアセチレンはポリ(メタクリル酸メチル)と同程度の光分解性を示した。一方、芳香族-置換アセチレンのポノマ-であるポリ(0-CF_3-フエニルアセチレン)では光照射により分子量分布が幾分広くなったが、分子量はあまり変化しなかった。このように、置換ポリアセチレンの光分解において大きな置換効果が観測された。 以上のように当年度の研究において、特異な機能を示すことが期待される新しい置換ポリアセチレンの合成を達成し、生成ポリマ-の特性について検討を加えた。
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