研究概要 |
可視光域の光エレクトロニクス材料として期待されている良質のII-VI半導体超格子作製には層と界面の歪と転位の実態をつかむことが重要である。本研究では、格子整合と歪や欠陥との関係を調べるために、ZnSxSe_<1-x>(x=0〜0.13、膜厚1.8〜3.4μm)を、GaAs上に成長させた試料(京都工芸繊維大・更実)のラマン散乱測定した。混晶にすることによって格子定数を5.67から5.63まで変化させることができる。室温ではX=0.06のときに、成長温度である40°Cではx=0.08のときに、基板の格子定数と一致する。ラマンスペクトルには、140cm^<-1>付近に幅広いDALA(Disorder Activated LA)モ-ドがみられ、ZnSeのTO,LOフォノンはそれぞれ、210、250cm^<-1>にみられる。ZnSeの2LOモ-ドが500cm^<-1>あたりにピ-クとしてみられる。これらのスペクトルから歪や欠陥の情報を読み取るには、おもにLOフォノンの位置と幅、およびDALAモ-ドの強度に注目すればよい。しかし、LOフォノンの位置は不整合歪ばかりでなくS-Seの混晶効果によってキシフトするので、本研究ではDALAの強度に注目した。DALA強度は組成に依存して変化するがx=0.088のところで比較的弱くなっていることが注目される。成長温度で格子が整合しているときには比較的格子欠陥の少ない膜ができるものと思われる。LO,2LOモ-ドの強度は励起波長に強く依存し、本研究で用いたアルゴンイオンレ-ザ-の発振波長領域に強く依存し、本研究で用いたアルゴンイオンレ-ザ-の発振波長領域では、高エネルギ-の光で励起するほど散乱強度が強くなる。そのとき発光も観測され、電子遷移による共鳴効果があるものと結論される。 これまでの研究を通じて、超格子や薄膜における格子不整合歪を知るためにはラマン散乱が有効な測定手段となることがわかった。
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