音声特徴抽出手法の高度化に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01608008
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 白井 克彦 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10063702)
• 研究分担者: 小林 哲則 法政大学, 工学部, 助教授 (30162001) ; 伊福部 達 北海道大学, 応用電気研究所, 教授 (70002102) ; 田村 進一 大阪大学, 医学部, 教授 (30029540) ; 中島 隆之 電子技術総合研究所, 知能情報部, 部長 ; 柳田 益造 郵政省通信総合研究所, 知覚機構, 室長 (00116120)
• キーワード: 音声特徴抽出 / 音声生成モデル / ニューラルネットワーク / 数量化理論 / 人工内耳 / 人工喉頭 / 個人性

研究概要

音声の特徴抽出手法の高度化のため,言語情報や個人性,自然性がいかなる形で音声波に含まれるかを検討した.成果は下記の通りである.
1)相互情報量を指標として,多種類の音響特徴量を多角的・階層的に用いて音韻性を決定する枠組みを確立した。話者性の特徴量を用いて多種類のコードブックを制御することによる話者適応の可能性を示した。
2)ピッチ対同期形のPSE分析法の適用による母音部のPSE分析結果と,一般的声道モデルに近似的な声道形と音源位置を与えて計算した伝達特性との類似性から,PSEと音声生成糸との関係を明らかにした.
3)口形情報を用い,音声認識の性能向上を図った.母音の識別を行う際,認識に有効な画像特徴の種類やレベルを明らかにした.
4)難聴者の聴神経刺激による時系列信号の知覚特性を調べ,人工喉頭の研究からピッチや波形ゆらぎの役割を明確にし,さらにホルマント遷移によって生じる結合音の知覚特性を明らかにした.
5)LPC分析精度の改善と特徴パラメータの時間的遷移を考慮に入れることによる音韻識別の改善を行った.
6)ニューラルネットワークで特徴抽出を行うための諸方式を検討した.
7)範躊間の依存関係扱える数量化理論を提案し,これを用いて範囲音韻の弁別素性の観点から音韻スペクトルの変形をモデル化した.
8)ニューラルネットによる音素認識に基づいて,状態遷移網により表現された単語辞書により,単語認識を行う方式を提案した.
9)連想を含む高次の知識を総動員して特徴抽出,認識を行うために洒落の一種である「地口」の検出法および連想の枠組みを明らかにした.
10)話者認識システムに必要となる個人性表現能力の高い特徴量を得るため,特徴量の統計的性質と認識性能との関係を明らかにした.
11)調音パラメタの高速抽出をニューラルネットを用いて行った.

研究成果

• [文献書誌] 白井,青木: "音響特徴量の情報量に基づく階層的クラスタリングによる音韻認識" 電子通信情報学会論文誌DーII. J72ーDーII. 1207-1214 (1989)
• [文献書誌] 大村,中島: "反射係数による子音声道伝達関数の計算法" 音響学会誌. 46. 18-27 (1990)
• [文献書誌] 河合,田村,岡崎: "光ディスクによる手話生成システム" テレビ学誌. (1990)
• [文献書誌] 光本,岡崎,梶見,田村,河合,副井: "エネルギー関数とオプティカルフローを用いた口唇輪郭の抽出・補間と追跡" 情報処理学会論文誌. (1990)
• [文献書誌] 田村進一: "医学における生体の画像処理" システム/制御/情報. Vol.33. 495-501 (1989)
• [文献書誌] T.IFUKUBE: "DESCRIMINATION OF SYNTHETIC VOWELS BY USING TACTILE VOCODER AND A COMPARISON WITH THAT BY AN EIGHT CHANNEL COCHL EARIMPLANT" IEEE TRANS.BMEー36. 1085-1091 (1989)
• [文献書誌] T.IFUKUBE,T.KAWASHIMA,T.ASAKURA: "NEW METHODS OF SOUND REPRODUCTION FROM OLD WAX CYKINDERS" J.Acoust.Soc.Amer.85No.4. 1759-1766 (1989)
• [文献書誌] T.IFUKUBE,Y.HIRATA,J.MATSUSHIMA: "A NEW MODEL OF AUDITORY PROSTHESIS USING A DIGITAL SIGNAL PROCESSOR" COMPUTERS FOR HANDICAPPED PERSONS. VOL.1. 372-380 (1989)
• [文献書誌] 八幡,伊福部: "音声のピッチパターンを考慮した電気人工咽頭" 音声言語医学会誌. 30.4. 309-315 (1989)
• [文献書誌] 熊谷,松島,高橋,吉村,伊福部: "蝸牛外電気刺激型人工内耳における対極の位置及び刺激周波数について" 日本聴覚医学会誌. 32.1. 47-54 (1989)
• [文献書誌] 松島,熊谷,原田,高橋,伊福部: "単電極型人工内耳システムにおける母音の伝達方式について" 日本聴覚医学会誌. 32.4. 275-279 (1989)
• [文献書誌] M.YANAGIDA,Y.YAMASHITA,O.KAKUSHO: "DETECTION AND IDENTIFICATION OF PLOSIVE SOUNDS IN JAPANESE WORDS" J.OF THE INST.OF ELECTRONICS AND TELECOM ENGINーeers. 34No.1. 82-87 (1988)
• [文献書誌] M.YANAGIDA,O.KAKUSHO: "WEIGHED LINEAR PREDICTION ANALYSIS OF SPEECH" J.OF THE RADIO RES.LAB.35No.144. 85-105 (1988)
• [文献書誌] 滝澤修,柳田益造: "音声言語における隠された意味構造の検出" 信学論 No8. J72ーDーII. 1313-1319 (1989)
• [文献書誌] 野田秀樹: "話者認識のシミュレーションにおける話者内変動モデルの精密化" 信学論A.
• [文献書誌] 野田,長内: "話者認識における話者数と認識率の信頼性との関係" 信学論A.
• [文献書誌] M.MAKINO,S.OISHI,K.HORIUCHI: "HOMOTOPY METHOD OF CALCULATING BIFURCATING SOLUTIONS FOR INFINITE DIMENSIONAL CHAOTIC SYSTEMS" 信学論E.
• [文献書誌] 小林,松田,渡辺: "範疇間の依存関係を扱う数量化理論とその音韻スペクトル変形のモデル化に対する応用" 信学論A.
• [文献書誌] 小林,渡辺,松田: "母音および無声破裂子音スペクトルの音韻環境依存性" 信学論A.