地球初期に存在したと考えられるマグマオ-シャンと原始大気との反応平衡により、原始大気組織が決定されたと考えられている。マグマオ-シャンの主体は珪酸塩溶融体であるが、これには炭素あるいは二酸化炭素は低圧では殆んど溶解しない。このため、炭素質隕石を地球始源物質とした場合、原始大気中の二酸化炭素濃度が高くなりすぎ、地球初期の冷却が効率的に行われないという可能性が指摘されていた。 本研究では、マグマオ-シャンのもう一つの構成要素であり、現在の核を形成するもととなった、金属鉄が炭素成分を地球内部に固定し、原始大気中の炭素成分を減少させる候補となり得るとの観点から、鉄一炭素系の相関系を高温高圧実験により調べた。この系は酸化状態に大きく影響されるため、本実験に先立ち、高圧容器内の酸化状態を測定する方法を開発した。実験は4〜12GPaの範囲で行なった。その結果、鉄一炭素系では、FeとFe_3Cの共融系であり、共融点組成、温度ともに今回の圧力範囲内では変化しないことが判明した。このことは、マグマオ-シャンの表層近くでの原始大気との反応の結果、始源物質に含まれていた炭素のかなりの部分は溶融鉄中にとり込まれ、マグマオ-シャン内を沈降して、地球深部まで運ばれた可能性が高いことを意味する。したがって、原始大気中の炭素成分量はそれほど高くならず、H_2Oが主体であることになる。このことは、初期地球の冷却史に主要な制約を与える。また、マグマオ-シャン表層部で溶融鉄中に固定された炭素が核形成にともなって、中途ではきだされることなく、地球中心部まで運ばれた可能性が示唆される。これにより、これまで考慮されることが殆んどなかった炭素も、現在の外核中の外核中の軽元素として重要な候補である可能性が高くなった。
|