ヒト、マウスの染色体中に10〜50塩基を一つの単位とした縦列型反復配列(ミニサテライト)が散在することが知られている。我々は、マウスのミニサテライト、mo-1をプロ-ブとしてBALB/Cマウスライブラリ-からmo-1配列と高い相補性を持ち、しかも高頻度に遺伝的不安定性を示すクロ-ン(Pc-1)をえた。BALB/CマウスゲノムDNAに対してサザンブロットを行うと同腹の子供の間でさえPc-1遺伝子座は多型性を示し、その遺伝的不安定は一世代当り約8.8%であった。一方、ヒトゲノムDNAに対し、Pc-1プロ-ブを用いサザンブロットを行うと予期に反し安定なハイブリッドを形成するバンドが検出された(0.1×SSC 65℃でバンドを形成)。すなわち、マウスのゲノム中で不安定な配列がヒトのゲノム中にも存在することを示唆する。両者のPc-1配列の同一性・特徴及び、その遺伝子座の安定性を明らかにする目的で、Pc-1遺伝子座の解析を試みた。マウスPc-1の塩基配列の一部にはGGCAGGGCAGの10残基からなる反復配列を含んでいた。一方、ヒトのPc-1についてもマウスPc-1をプロ-ブとしヒトゲノムライブラリ-から高い相同性を持つDNA断片をクロ-ン化した。ヒトPc-1クロ-ンはやはりマウスと同一の配列をもつミニサテライトを含んでいたが、その反復配列には多くの変異が見られた。また、ミニサテライトのフランキング配列も異なる配列を示した。これらの結果は、Pc-1座そのものが進化的に保存されているというよりは、むしろ、Pc-1座に存在するミニサテライトが種を起えて、新たに生じたものと考えられる。
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