研究概要 |
既報細菌型フェレドキシン27種の進化学的解析は、本蛋白種で古来指摘されていた遺伝子重複の分子機構について26アミノ酸残基の祖先型分子の重複に3残基のル-プ状コネクタ-が間に挿入されていることを明らかにした。つづいてクロロプラストに見られるフェレドキシンとの関連について解析が進められてきたが、既報の27-28残基祖先型の3重複説を覆し、植物型フェレドキシンは細菌型フェレドキシンの遺伝子重複に依り生じた事を明示した。高度好塩菌が植物型フェレドキシンを、Methanosarcina,Sulfolobus等が細菌型フェレドキシンを持つことは古細菌群の分類、進化的位置付けの解析に更なる材料を与えるもので新展開が待たれる。 リボソ-ム'A'蛋白種の総合的解析による新展開は次のようである。生物界を3大別する真核生物、メタバクテリア、原核生物からの既報の一次構造が通して解析されると、本蛋白分子構造はドラスチックな進化的事象である分子内転移の前後で見られる元祖型と転移型に分けられることが分かる。更に後者に族する真核生物、メタバクテリアでそれぞれ明らかな特徴が見られるので計三タイプとなる。用いられた配列を通したアライメントが我々の主張する方法で構築されると残基挿入、欠失によるギャップ位置が明確に特定されしかも特定された位置は高次構造上の単位を区切ることが示されたので、それぞれの蛋白分子特有の保存単位の存在を示唆するものである。'A'蛋白種の関連蛋白種POの調査が進められたが、大腸菌L10と転移型'A'蛋白の遺伝子融合によって生じたことを明らかにして生物界の三大別群の進化的関連を明示した。情報高分子解析の素材の蓄積をはかって遺伝子解析が進められ酵母リボソ-ム蛋白YS25に引き続きYL41遺伝子を明らかにしたが、真核生物特有のLys,Arg過多含有蛋白種であったので真核化への過程を解析する一切札となるものと期待される。
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