ラットの線条体にはチロシン水酸化酵素や芳香族アミノ酸脱炭酸酵素の免疫活性を示す中形有棘性ニュ-ロンが存在する。線条体を黒質緻密質由来のド-パミン作動性入力神経線維から遮断すると、チロシン水酸化酵素や芳香族アミノ酸脱炭酸酵素の免疫活性を示す線条体ニュ-ロンが増数する。この変化の定量的検当を試みた。すなわち、まず、一側の中脳腹側被蓋野のド-パミン作動性ニュ-ロン群を、6ハイドロキシド-パミンを局所注入することによって、完全に破壊した。このようなラットを7日間生存させた後、中脳腹側被蓋野の破壊によってド-パミン作動性入力神経線維から遮断された側坐核について、チロシン水酸化酵素の免疫活性を示す側坐核ニュ-ロンの総数の変化を調らべた。 正常ラットの一側の側坐核には、チロシン水酸化酵素免疫活性を示す側坐核ニュ-ロンは3〜9個見られるにすぎないが、ド-パミン作動性入力神経線維遮断後一週間では、24〜66個に増数した。 ド-パミン作動性入力神経線維から遮断された脳の領域において、チロシン水酸化酵素免疫活性陽性ニュ-ロンが増数する現象は、線条体(尾状核、被殻、側坐核)にだけ特異的な現象ではなく、嗅球、嗅結節、大脳皮質(特に、帯状回の吻側部)等においても観察された。 以上の現象において、増数してくるチロシン水酸化酵素免疫活性陽性ニュ-ロンがド-パミンを合成する能力を持つならば、パ-キンソン病の治療原理に関して新しい示唆を与える現象として興味深い。
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