研究課題
〔はじめに〕われわれは、吃音症状と呼吸パタ-ンとの関係を研究する事に、特に小児吃音の診断、重症度判定、及び治療効果の判定に役立つ測定パラメ-タの同定および検査方法の確立をテ-マとした研究を行っているが、今年度は成人吃音者が発語中に示す特有の呼吸パタ-ンを成人非吃音者の発語時の呼吸パタ-ンと比較してみた。〔対象〕成人吃音者(2名)および成人非吃音者(2名)を対象とし、発語時のパラメ-タを測定した。測定には、初年度に開発した呼吸測定用特殊装置に改良を加え、使用した。〔方法〕呼吸測定用特殊装置を用いた。被験者にインダクタンス式呼吸プレチスモグラフ(RIP)を胸郭(RC)及び腹部(ABD)に装着した。マスク状の呼吸カプラ-を通じて炭酸ガスモニタ-及びニュ-モタコメ-タを接続した。被験者は、日本文化科学社刊「ことばのテスト絵本」からとった単語(33語)を見ながら音読した。連続波形を音声とともにポリグラフに記録した。呼吸波形から呼吸開始、発語開始、発語終了、呼気終末の4つのレベルを読みとった。〔結果と考察〕(1)吃音者、非吃音者を問わず総呼吸容量レベルは呼気開始、発語開始、発語終了・呼気終末いずれのレベルも同一被験者内では変化方向がほぼ平行した。(2)総呼吸容量レベルの変化方向は、非吃音者では不変ないし減少を示したのに対し、吃音者では、増加を示した。(3)総呼吸容量レベルの変化方向を決定したのは多くの場合、胸郭であったが、横隔膜の関与の大きい者が非吃音者1名に見られた。(4)吃音者では炭素ガスに対する呼吸応答が低下している可能性がある。(5)非吃音者、吃音者を問わずテスト中の炭酸ガスに上昇の見られた者において、それに見合った換気量の増加は認められなかった。
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