研究課題/領域番号 |
01631515
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤井 博信 広島大学, 総合科学部, 教授 (30034573)
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研究分担者 |
浴野 稔一 広島大学, 総合科学部, 助手 (40185103)
森本 邦彦 広島大学, 総合科学部, 助教授 (90100974)
高畠 敏郎 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40171540)
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キーワード | YBCO / 水素吸蔵 / ホ-ル・キャリア-の制御 / BSCCO / セラミックス高温超伝導 |
研究概要 |
銅を含んだセラミックス高温超伝導体(Lp_<1-X>Sr_X)_2CuO_<4-δ>,YBa_2Cu_3O_<7-δ>,Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>Bi_<1.6>Pb_<0.4>Sr_2Ca_2Cu_3O_<10+δ>および(Nd_<1-X>Ce_X)_2CuO_<4-δ>系などは、いずれも、二次元的なCuO_2面をもち、その面内のキャリア-、すなわち正孔(ホ-ル)又は電子の存在が超伝導の発現にとって不可欠であると信じられている。我々は、水素吸蔵によって、CuO_2面のキャリア-数を系統的に変化させその時起る物性変化から超伝導発現機構の解明に手掛かりを与えることを計画した。本年度、我々は手始めにホ-ル・キャリア-超伝導体YBa_2Cu_3O_<6.91>(YBCO)、Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(BSCCO)およびBi_<1.6>Pb_<0.4>Sr_2Ca_2Cu_3O_<10+δ>(BPSCCO)に水素を吸蔵させ超伝導転移温度Tcの変化を測定した。その結果、(1)YBCO系では、Tcは水素濃度によってほとんど変化しないこと、(2)BSCCO系では、Tcは80Kから水素量に比例して上昇し、水素量χ=0.4コ/モルで最大(Tc=92K)を示すことおよび(3)BPSCCO系ではTcはχに対して単調に減少することを見い出した。一方、ヨ-ド滴定法およびホ-ル効果の測定より、いずれの系の中でも水素はプロトンH^+として振るまい、電子を結晶中へ改出することが明らかになった。これらの結果を総合すると、CuO_2面のホ-ル・キャリア-数とTcの間には、十倉らが提唱しているようなユニザ-サルな関係が存在していると結論できる。すなわち、TcはCuO_2面当たり0.15〜0.25コのホ-ル数のとき最大をとる。BSCCO系では母体(χ=0)でホ-ル過剰にあり、水素吸蔵量とともにホ-ル数が減少しTc最大が現れる。BPSCCO系では、すでに最適ホ-ル数にあり、水素吸蔵によってホ-ル数が減少しても、Tcは単調に降下する。一方、YBCO系では、水素はCuOチェ-ンの近くに吸蔵されるため、CuOチェ-ンの近くの局在ホ-ル数を減少させていると考えられ、CuO_2面のホ-ル数は変化しないと考えられる。この結果、Tcはχに依存しないと判断される。しかし逆に、プロトンのNMRより、YBCO系では、TcでT_1^<-1>のエンハンスメントが観測された。これは、CuO_2面のスピンのゆらぎの影響が弱いために観測できたものと思われ、水素はCuO_2面から離れた所に存在していることを示している。
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