研究課題/領域番号 |
01632503
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
津田 穣 千葉大学, 薬学部, 助教授 (90009506)
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研究分担者 |
及川 節子 千葉大学, 薬学部, 助手 (60101359)
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キーワード | シランプラズマ / ジシランプラズマ / ab initio分子軌道法 / 反応素過程 / 反応機構 / シリコン表面活性化 / 薄膜成長 |
研究概要 |
本研究は、ジランプラズマ中に発生する種々のラジカル種の生成素過程を量子化学的計算によって明らかにすることによって、ラジカル活性種の起源となる分子の電子状態を決定し、特定ラジカルの選択的生成のための基礎的デ-タを得ると共に、生成した活性ラジカル種とシリコン表面との相互作用ならびにその結果生じる表面反応のメカニズムを量子化学的方法によって明らかにしようとするものである。 今年度は、「ラジカル活性種の生成素過程とその起源となる電子状態の決定」として、特に低温プラズマの特徴である三重項状態への直接励起に注目して、Si2H6プラズマの反応素過程をab initio SCF MO法により明らかにする研究を行った。その結果、(1)Si2H6の最低三重項状態エネルギ-は6.85eVであり電子状態は1^3A2uであった。この値は最近広角電子線散乱の実験から測定された6.3eVとほぼ一致する。次に、1^3A2u状態から始まる最小エネルギ-経路を求めると、Si-Si結合が切断しシリカルラジカル2分子が生じる方向にエネルギ-が単調減少するポテンシャルエネルギ-超曲面が得られた。この時、シリルラジカルは1ケあたり約50kcal/molの過剰energyを得るので、別のSi2H6と衝突すると水素引抜きを起こしてSi2H5ラジカルとSiH4分子を生じうることが分かった。これらの結果は、Si2H6プラズマ中で観測される種々の実験結果を良く説明できる。 次に、シランプラズマによるa-Si:H膜の成長機構について、成長の初期段階に起こると考えられる薄膜表面の活性化機構について研究した。薄膜成長では基板表面温度が高いほど成長速度が速い。表面水素原子が脱離する3つの過程について、ab initio SCF MO法でその活性化エネルギ-を計算した所、1つのSi原子からH2分子が同時に脱離する反応が約60kcal/molで最も起こりやすいことがわかった。この値は松田らによる実値2.7eV(62kcal/mol)に極めて近く、この反応がシリコン薄膜成長機構を考える上で重要であることを示している。 以上のように、シラン系プラズマ中のラジカル種生成過程および膜成長過程について重要な基礎デ-タを得ることができ、今年度計画はほぼ達成された。来年度は、膜成長機構についてさらに解明を進めたいと考えている。
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