研究概要 |
旧来のト-チでは、プラズマ発生条件の範囲が狭く、特性評価が困難であるなどの短所があった為に、本年度は新しいト-チを設計試作した。立体回路素子部に改良を加えたことにより、ア-キングが抑制され、より広い領域でのプラズマ発生が実現し、特に減圧下でのプラズマ発生が可能となった。プラズマの安定性はガス組成、流量、圧力、電極間ギャップ等に強く依存し、プラズマジェットが安定に発生し得る圧給には、下限が存在することが判明した。更にチャンバ-との結合様式の変更により、ト-チノズル出口近傍の発光分析が可能となった。Ar-H_2-CH_4大気圧プラズマに関する発光分析により、ノズル出口近傍においてH原子のバルマ-系列の発光が検出され、その強度からH原子の励起温度はおよそ7000Kと求められた。H原子の発光はノズル出口から30mm程度で急激に減衰するが、C系ラジカルはより長範囲に分布し、基板近傍でも検出された。C_x系ラジカルの温度はC_2の振動準位について定義でき、そのswanバンドから、位置に関わらず約5000Kであることが判明した。また、基板ホルダ-を兼ねた二段差動排気ノズルを使用することにより、基板近傍の気相種を質量分析することが可能となり、基板近傍ではC_1,C_2系気相種が主であり、C_3系以上の種は殆ど存在しないことが確認された。減圧下においても上記方法により、気相種を分析した結果、大気圧下の場合に比較して励起種の軸方向分布が異なり、基板上ではC_1系気相種がより多く、C_2系気相種が減少することが判明した。今後、ガス組成、圧力、電極間ギャップ等の外部パラメ-タと気相種の分析結果とを総合的に検討することにより、基板上の気相種の組成、励起温度等を制御する技術を確立する必要がある。
|