研究課題
MSRの実験に関し、平成元年度6月までは、主として検出器の最適位置の探索に費やされた。ミュオンビームを磁場によって絞ることが予想どうりゆかず、結局コリメータによってビームを細く絞ったため強度がかなり減少し、そのため測定にかなり時間がかかることが判明した。また測定の手始めとして、既に低磁場でのデータがあり、ネール温度や緩和時間が丁度いい領域にあるMuOの綻緩和の測定を試みた。190Kでデータが得られ10.5テスラでの緩和時間が低磁場でのそれとほとんど同じ3μ秒であった。6月から12月まではKEKの加速器が停止していたので測定はおこなわれなかったが、その間にクライオスタットの制作および、6月までテストを行っていたμポートからもっと偏極度も高く強度も強いπポートへの移動を行った。これにより約10分の1の時間で測定がおこなえるものと予想された。平成2年1月から再びマシンタイムが与えられ、まずMnOの常磁性緩和の測定を行って比較したところμポートで行ったときよりもはるかにいいS/Nでデータを得ることができた。そしてメタ磁性を示すPr_2Co_2Si_2の強磁場中磁気相転移にともなう縦緩和の磁場変化を調べようとしている。この物質は12テスラで相転移をおこすが10.5テスラで緩和を測定することができた。現在磁場を変化させて縦緩和時間の変化を測定している。このような磁気相転移に関連した緩和についての情報は全くはじめてであり大きな成果と思われる。これと平行に2月から新しく中性子回折による強磁場中磁気構造の決定の実験が始められている。まず現在その特異な磁化過程と伊達モデルによって話題となっているPrCo_2Si_2について行う準備が進められている。今年度はこのための装置の開発とクライオスタットの制作、架台の設置等の作業が行われた。
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