Uの5f電子は物質により局在的振舞を示す場合から遍歴的振舞を示す場合まで様々であると言われてきたが、5fモ-メントの動的振舞にまで立ち入った理解は現在までのところ極めて不充分である。本研究は、巨視的性質の異なる代表的物質を系統的にとりあげ、その動的磁性の共通点・相違点を明らかにすることによりU化合物の磁性の系統的理解に資することを目的としている。以下本研究により得られた成果を、とりあげた物質ごとにまとめる。 1.UCu_5:典型的な重い電子系の反強磁性体として知られている。常磁性状態におけるCu核の核スピン・格子緩和率T_1^<-1>はT→T_Nのとき(T_1T)^<-1>〓(T-T_N)^<-0.4>なる温度変化を示すが、これはKondo不純物型のdynamicsをもつ不純物が交換相互作用により結合していると考えて理論的に略々説明できる。T_Nより充分高温では、T_1より評価した5fモ-メントの緩和率は大きくかつ温度変化も大きい。 2.UAl_2:典型的なスピンのゆらぎの化合物として知られてきた物質であるが、Al核のT_1^<-1>の温度変化は、高温の局在モ-メント様の振舞から低温のFermi流体様の振舞へのcross-overとして理解でき、またこの物質の重要な特性温度が約100Kであることを示している。T_1より評価した5fモ-メントの緩和率はUCu_5同様大きくかつ温度変化も大きい。約40K以下で一様帯磁率は再びCurie-Weiss様の増加を示すが、この領域では(T_1T)^<-1>の増加はXの増加に比例している。これは強磁性寸前の金属に対する理論に一致する振舞であり、低温の熱力学的性質に対して遷移金属に対するスピンのゆらぎの理論が適用できる可能性を示している。 3.UPd_2In(重い電子系の新物質)及びUAs(強い磁気相互作用と、重い電子系としての特徴とが共存する系):各々In核及びAs核のNMRの観測に成功し、現在研究が進行中である。
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